『拾遺和歌集』(『拾遺集』)

古典への扉

 『拾遺和歌集』(『拾遺集』)は、花山院の親撰とされる第三勅撰和歌集である。藤原公任撰とされる『拾遺抄』が勅撰集として扱はれてきた時期もあるが、現在は『拾遺抄』を増補して『拾遺和歌集』が成立したとされる。流布本では、全20巻、1350首余。「序」は無い。屏風歌や歌合の歌など、公的な歌(晴の歌)が多い。主な歌人は、紀貫之・柿本人麻呂・大中臣能宣・清原元輔・平兼盛ら。『古今和歌集』が『万葉集』所載歌を基本的には採らず、『後撰和歌集』でも約20首しか採らなかつたのに対し、『万葉集』の歌も多数採つてゐる。
 小生は、岩波書店の新日本古典文学大系『拾遺和歌集』(小町谷照彦 校注)で読んだ。(新日本古典文学大系「八代集」が刊行されると、『古今和歌集』と『千載和歌集』はすでに別の注釈書で読んでゐたので、それ以外を『後撰和歌集』から順次読み進めた。)
 新日本古典文学大系『拾遺和歌集』(小町谷照彦 校注)は、脚注形式で、注は、大意・『拾遺抄』歌番号・第一次出典・語釈・参考事項を記す。大意は、ほぼ現代語訳で、原文を尊重しながら、必要に応じて言葉を補つてゐる。巻末に、他出文献一覧・解説・所収屏風歌等一覧・所収歌合歌一覧・地名索引・人名索引・初句索引を付す。

 『拾遺和歌集』の全注釈は、管見では、他に明治書院和歌文学大系『拾遺和歌集』・岩波文庫『拾遺和歌集』しか無い。
 明治書院和歌文学大系『拾遺和歌集』(増田繁夫 校注)は、脚注形式で、注は、語釈・歌意の解説で、歌意は全訳ではなく、詞書の訳も無い。巻末に、解説と作者名・詞書中人名一覧、地名・寺社名一覧、初句索引を付す。
 岩波文庫『拾遺和歌集』(小町谷照彦・倉田実 校注)は、上記新日本古典文学大系版を基に文庫化したもので、校注に倉田実を加へ、全面的に見直しをしてゐる。見開きで、右ページに原文を掲げ、左ページに2段組で注を付す。注は、大意(現代語訳)・『拾遺抄』の歌番号と異動のある本文・第一次出典・語釈・参考事項を記す。注は、文庫としてはかなり詳細である。大意(現代語訳)は、新日本古典文学大系版のものを手直ししてゐる。ただし、新日本古典文学大系版の巻末にあつた他出文献一覧・所収屏風歌等一覧・所収歌合歌一覧・地名索引は省き、解説・初句索引・人名索引のみ載せる。

 旧版の岩波文庫『拾遺和歌集』(松田祐吉 校訂)平凡社東洋文庫『八代集2』(奥村恆哉校注)は、本文だけで注釈は無い。(東洋文庫『八代集』の注は、勅撰集・説話・歴史物語・歌学・歌論への引用の注記のみで、語釈などは無い。)

 今、『拾遺和歌集』を読むのならば、最新の注釈書で、携帯しやすく(約700ページとかなり厚いけれど)、注も詳細な岩波文庫『拾遺和歌集』(小町谷照彦・倉田実 校注)が好いと思ふ。
 教科書には、和歌の教材として、秀歌選といつた形で、『拾遺和歌集』からも何首かが採られることがある。

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