『讃岐典侍日記』の作者は、堀河天皇の寵愛を受けた典侍・藤原長子(藤原顕綱の女)。上下2巻で、上巻は、堀河帝の発病から崩御までの様子が、献身的に看病した作者によつて詳細に述べられてゐる。下巻は、堀川帝の子である幼い鳥羽帝のもとに再出仕した作者が1年間の月々の行事に臨みながら堀川帝を追慕する心情が描かれる。(鎌倉時代の『本朝書籍目録』では3巻となつてゐるので、中巻あるいは本来の下巻が失はれたとする説もある。)
小生は、最近、講談社学術文庫『讃岐典侍日記全訳注』(森本元子 訳注)で読んだ。(「積ん読解消 読書日記」の4月14日付の投稿参照。)

『讃岐典侍日記』の主な注釈書には、他に、岩波文庫『讃岐典侍日記』・小学館の新編日本文学全集『和泉式部日記 紫式部日記 更級日記 讃岐典侍日記』・笠間書院の『讃岐典侍日記全注釈』・笠間文庫『原文&現代語訳シリーズ 讃岐典侍日記』などがある。
岩波文庫『讃岐典侍日記』(玉井幸助 校訂)は、戦前の版で(小生は一括重版の時に買つた)、脚註は諸本の異同のみで語釈は無い。

小学館の新編日本文学全集『和泉式部日記 紫式部日記 更級日記 讃岐典侍日記』(『讃岐典侍日記』の訳注担当は石井文夫)は、頭注・本文・現代語訳の三段組形式。内容に従つて段落に分け小見出しと通し番号を付してゐる。注は丁寧である。現代語訳は原文を尊重してゐるが長い文を途中で切つたり言葉を補つたりしてゐる所もある。

笠間書院の『讃岐典侍日記全注釈』(岩佐美代子 訳注)は、注は詳細で、作品の背景も丁寧に解説し、新たな見解も多い。
笠間文庫『原文&現代語訳シリーズ 讃岐典侍日記』(小谷野純一 訳注)は、本文を44の章節に区分して小見出しを付け、見開きで、本文を右ページ、現代語訳を左ページに掲示し、両ページに渡つて脚注を施してゐる。注は丁寧で、現代語訳も本文に忠実で、言葉を補ふ場合は括弧内に入れてゐる。巻末に「改訂本文一覧」「脚注語句索引」「和歌各句索引」を付す。小谷野には、詳細な『讃岐典侍日記全評釈』(風間書房)の著もある。

今、『讃岐典侍日記』を原文で読むならば、携帯しやすく注も詳しい講談社学術文庫『讃岐典侍日記全訳注』(森本元子 訳注)がよいと思ふ。笠間文庫『原文&現代語訳シリーズ 讃岐典侍日記』(小谷野純一 訳注)も、版は少し大きいがソフトカバーなので持ち歩きもそれほど苦にならないだらう。これでもよいと思ふ。
最近は、高校の2・3年の「古典」の教科書にさまざまな文章が教材として採られるやうになり、『讃岐典侍日記』も載るやうになつたが、小生は、授業で扱つたことは無い。
『讃岐典侍日記』を深く読み解かうと思つたら、風間書房の『讃岐典侍日記全評釈』(小谷野純一 訳注)と笠間書院の『讃岐典侍日記全注釈』(岩佐美代子 訳注)とを参照されたし。
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