街角の本屋までの旅

 吉行淳之介に『街角の煙草屋までの旅』といふ随筆集がある。「私たちが飲み屋や角の八百屋まで歩いて行く時でさえ、それが二度と戻って来ないことになるかもしれない旅だということに気が付いているだろうか。そのことを強く感じ、家から一歩外へ出る度に航海に出たという気になれば、それで人生が少しは変るのではないだろうか。」といふヘンリー・ミラーの文章を引き、吉行は「街角の煙草屋まで行くのも、旅と呼んでいい」とし、「自分の住んでいる都会の中を動くことを、私は旅と受け止めているところがあるようだ。」と言つてゐる。
 小生は煙草を吸はない。街から煙草屋はほとんど消えた。タイトルの「煙草屋」を「本屋」に変へた所以である。(本屋も日に日に減つてしまつてゐるが…。)勿論「本屋」は仮の目的で、「文房具店」や「美術館」や「食堂」でもいいし、また時には何の目的も無くてもよい。晴れた日には、鞄に文庫本と写真機を入れてブラブラ街を旅してみたい。

「街角の本屋までの旅」の投稿へのリンク
https://seiyu-udoku.jp/category/tripwalking/

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