『詞花和歌集』(『詞花集』)

古典への扉

 『詞花和歌集』(『詞花集』)は、第六勅撰和歌集崇徳院の命により、藤原顕輔が編纂。『詞華和歌集』とも。全10巻。400首余。巻数は『金葉和歌集』に倣ふ。主要歌人は、曾禰好忠・和泉式部・大江匡房・源俊頼ら。成立当時、(政治状況に配慮したためか)当代歌人の歌が少ないこともあり、藤原為経(寂超)は『後葉和歌集』を編み、藤原教長は『拾遺古今』(現存せず)を編んで批判した。崇徳院も改撰を考へたらしいが実現しなかつた。また、『金葉和歌集』の「三奏本」と61首もの重複があるのも異例。
 小生は、岩波書店の新日本古典文学大系『金葉和歌集 詞花和歌集』『詞花和歌集』校注担当は工藤重矩)で読んだ。
 新日本古典文学大系『金葉和歌集 詞花和歌集』『詞花和歌集』校注担当は工藤重矩)は、脚注形式で、注は、大意・語注・参考事項を記す。大意は、ほぼ現代語訳で、原文に忠実だが多少言葉を補つてゐる。巻末に、付録として他出一覧・出典歌合及び百首歌解説、解説、地名索引・人名索引・初句索引を付す。(索引は『金葉和歌集』と共通。)

 『詞花和歌集』の全注釈には、他に笠間書院笠間古典叢書『詞花和歌集』・笠間注釈叢刊『詞花和歌集全釈』・和泉書院和泉古典叢書『詞花和歌集』・明治書院和歌文学大系『金葉和歌集/詞花和歌集』・岩波文庫『詞花和歌集』がある。
 笠間古典叢書『詞花和歌集』(井上宗雄・片野達郎 校注)は、未見だが、笠間書院のHPに拠れば、校訂した本文に解題・頭注・補注及び校異・作者部類・詞書人名索引・和歌初句索引を付したものである。
 笠間注釈叢刊『詞花和歌集全釈』(菅根順之 訳注)は、本文を掲げた後に、解釈・校異・語釈・鑑賞・参考文献・古注を載せる。解釈(現代語訳)は、必要に応じて言葉を補つてゐる。巻末に、底本書誌・詞花集作者部類・各句索引を付す。
 和泉古典叢書『詞花和歌集』(松野陽一 校注)は、解題の後に、頭注形式で本文を掲げる。注は、出典・語釈・大意(現代語訳)・鑑賞の要点・配列構成上の問題点や留意すべき表現について記す。巻末に、校訂付記・顕昭「詞花集注」・補注・撰集資料一覧・詞花後葉共通歌対照表・歌枕地名一覧・作者略伝・詞書人名索引・和歌初句索引を付す。
 和歌文学大系『金葉和歌集/詞花和歌集』(『詞花和歌集』校注担当は柏木由夫)は、脚注形式で、注は、他の歌集や歌書における当該歌の入集状況・(必要に応じて)大意・語注・解釈や鑑賞の参考となる事項について記す。ただし、大意を付した歌は少ない。巻末に、校異一覧・解説・人名一覧・地名一覧・初句索引を付す。(索引は『金葉和歌集』と共通。)
 岩波文庫『詞花和歌集』(工藤重矩 校注)は、上記新日本古典文学大系『金葉和歌集 詞花和歌集』を基に、注を見直してゐる。見開きで、右ページに原文を掲げ、左ページに2段組で注を付す。注は、大意(現代語訳)・語釈・参考事項を記す。注は、文庫としては詳細である。巻末に、初句索引・人名索引を付す。

 旧版の岩波文庫『詞花和歌集』(松田武夫 校訂)・平凡社東洋文庫『八代集3』(奥村恆哉校注)は、本文だけで注釈は無い。(東洋文庫『八代集』の注は、勅撰集・説話・歴史物語・歌学・歌論への引用の注記のみで、語釈などは無い。)

 今、『詞花和歌集』を原文で読むのなら、やはり最新の注釈書で、携帯しやすく、注も比較的詳細な岩波文庫『金葉和歌集 詞花和歌集』(川村晃生・柏木由夫・伊倉史人 校注)が好いと思ふ。さらに深く読み込みたいなら、笠間注釈叢刊『詞花和歌集全釈』(菅根順之 訳注)和泉古典叢書『詞花和歌集』(松野陽一 校注)を併せ読まれたし。特に、和泉古典叢書『詞花和歌集』は、付録の顕昭「詞花集注」詞花後葉共通歌対照表が興味深い。
 教科書に『詞花和歌集』の歌が載るとしたら、『百人一首』に採られた歌くらゐだと思ふ。

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