思ひ出の文房具7 MONT BLANC「マイスターシュテュック144」

偏愛文房具

 「思ひ出の文房具」として、前に卒業論文を書いた「MONT BLANC」の「マイスターシュテュック146」を挙げたが、同じ「MONT BLANC」「マイスターシュテュック144」(現在のモデル名は「マイスターシュテュック クラシック145」)も思ひ出深い。
 これも「146」同様、大学時代にアルバイトで稼いだ金を貯めて買つたもの。ペン先はEF(極細)。MONT BLANCのペン先は、欧米の万年筆の中では柔らかめで、止め・跳ね・払ひのある日本語を書くのに比較的向いてゐる。(ただし、欧米のペン先は同じ極細でも日本のものに比べると太いので、小さな文字や画数の多い漢字を書くには、国産の万年筆の方が適してゐる。)以前にも書いたが、小生はボールペンの書き味や筆跡が嫌ひなので、ペン書きが必要な場合は原則として万年筆を使ふ。「146」は、ペン先がOM(中太字・先端斜め)で、小さな字を書くには向かないので、手紙や書類を書くにはこの「144」を主に使つた。
 教員になつてからは、「指導要録」(学校における生徒の学籍並びに指導の過程及び結果の要約を記録したもの)や「調査書」(大学受験や就職に必要な書類で、成績や総合的な探究の時間の記録及び特別活動の記録などが記載されたもの)を記入するのに、もつぱらこの「144」を用ゐた。大事な書類なので、やはり丁寧に書くやうに心掛け、自己満足だが筆記用具にも拘つた。(どちらも現在はパソコンから出力することになつてゐる。)
 ちなみに、ペン先は14金で、小生のもの(下の写真・80年代に購入)は全面金色だが、現在のものは、外側は金色だが、内側はプラチナ装飾が施され、その周辺には縁取り模様が刻まれてゐる。(正直、こちらの方が高級感はある。実際、値段もかなり高くなつてしまつた。)

 今では、書類は勿論、手紙を書くことも稀になつてしまつたが、リビングに置いて、インクが固まらないやうに、時々取り出しては、心に移り行くよしなしごとをメモ帳に書いては破り捨てたりしてゐる。

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