今回の「感動文房具」の「スリップシール」とは、商品名ではなく、PLATINUM(PLATINUM万年筆)が開発した万年筆のインクが乾燥することを防ぐための機構である。
PLATINUMのHPでは、「スリップシール機構」について次のやうに説明してゐる。
従来の万年筆はペン先をカバーし気密構造にした場合、キャップの開閉でポンピングと云われるインクの噴き出しを起こし、これを防ぐことは極めて困難とされていました。通気を持たせる開放構造にするしか方法が無く、次の問題がありました。
1.インクの水分が蒸発し、だんだん濃くなり、かすれ気味になる。
2.3 ~ 6 ヶ月使用しないと、乾燥して書けなくなる。
3.インクの水分が揮発して染料分が内部構造にこびり付き、インククリーナーセットによる洗浄が必要になる。最悪の場合、メーカー宛に修理(分解して洗浄)を依頼しなければならなくなる。
プラチナ万年筆では、万年筆では当たり前とされてきたこの問題を、お客様の立場に立って原点に戻り、なぜできないのかを 突き詰め、この課題に取り組みました。
回転ネジ式キャップで初めて耐久性を考慮した完全気密キャップ「スリップシール機構」を実用化する事により、プレピー万年筆やプレジール万年筆のスナップ式に続き、実用化困難とされていた回転ネジ式キャップの高級万年筆でも完全気密を可能にしました。
(特許取得済 登録番号 第5637515号)
確かに、万年筆は、しばらく使はずにゐると内部のインクの水分が蒸発して、乾燥した着色剤の成分でペン先が詰まつてしまふ。昔のやうに日常的に万年筆を使つてゐればまだいいが、パソコンを使ふやうになり手書きをする機会が減ると、なほさらである。これは、MONT BLANCだらうがPelicanだらうがPARKERだらうがPILOTだらうが、変はらない。小生も、修理に出したことは無いが、ぬるま湯で洗つたり専用のキットで洗滌したりしたことは、数知れない。使用頻度の少ない万年筆は、洗滌した後インクは入れずに保管せざるを得なくなり、最近ではますます使ふ機会が減つてしまつてゐる。
写真は、小生の「#3776センチュリー ブルゴーニュ」である。実際に1年以上使用せずにゐても、インクが乾いてペン先が目詰まりすることはなく、スラスラと書くことができて感動した。上の引用にもある通り、インクの噴き出し防止と乾燥防止とを両立させることは、かなり困難だつたと思ふが、それを実現したPLATINUMの技術力と努力に敬意を表したい。

万年筆を買ふ時には、使用目的に合はせてペン先の太さや柔らかさを選び、好みのデザインや持ちやすさを踏まへて、選定するだらう。ただ、パソコンが普及した昨今、たまにしか万年筆を使はないのなら、PLATINUMの万年筆のスリップシール機構は大きなアドバンテージになるだらう。



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