木曾路2日目 「妻籠宿」「馬籠宿」「恵那峡」

街角の本屋までの旅

2025.05.05

 木曾路行2日目。
 飯田のホテルからバスで「妻籠宿」へ。
 島崎藤村『夜明け前』にも「木曾路はすべて山の中である。」とあるやうに、木曾谷は、約9割が森林で占められ耕作地が限られるので、古くから木曾檜などの木材資源を年貢とすることが行はれてきた。「妻籠宿」に向かふ街道沿ひにも、木工芸品漆器を作る工房がいくつもあつた。

 「妻籠宿」へは、目立つた渋滞も無く、駐車場にもスムースに入れた。
 「妻籠宿」は、中山道(江戸から)42番目、木曾路十一宿の10番目の宿場で、中山道飯田街道追分(分岐点)に位置する交通の要衝だつた。1976年に最初の「重要伝統的建造物群保存地区」の一つに選定された。

 宿場の端には、「高札場」があり、法令を記した板を掲示し、民衆・旅人に周知してゐる。

 「高札場」から反対側の端に向かつて歩く。坂下の藤棚が綺麗だつた。

 「奈良井宿」は、「鍵の手」以外は比較的真つ直ぐな道だつたが、「妻籠宿」の道は、見通しを防ぐためか、曲がつてゐる。

 「脇本陣奥谷」は、代々脇本陣・問屋を務めた家で、現在の建物は明治10年に建て替へたもの。「歴史資料館」がある。

 「妻籠宿本陣」は、島崎氏が任命され、明治に至るまで本陣・庄屋を兼ね務めたといふ。島崎藤村の母の実家である。1995年(平成7年)に修復された。

 「枡形」の先、寺下の町並は、日本で最初に宿場保存事業が行はれた、妻籠保存の原点とも言ふべき町並である。ここには菓子司「澤田屋」があり、「栗きんとん」「妻籠の秋 柿と栗」(干し柿の中に栗きんとんが入つてゐる)を買つた。(生菓子で日持ちしないので、他所ではほとんど売つてゐないさうだ。)

 花桃の他、山藤も見頃だつた。(下の写真は、妻籠宿の近くで撮つたもの。)

 「馬籠宿」は、中山道(江戸から)43番目で、木曾十一宿の最南の宿場町。火災により古い町並みは石畳と「枡形」以外はすべて消失したが、その後復元された。かつては長野県木曽郡山口村に属したが、2005年(平成17年)の越県合併により岐阜県中津川市に編入された。島崎藤村の故郷としても知られる。
 宿場内の街道は、石畳の敷かれた南北の坂になつてゐる。南端の駐車場にバスを駐め、坂道を登つて行く。道の両側には旅館や飲食店・土産物屋が並んでをり、土産物屋には漆器木工芸品なども置いてゐる。

 宿場の真ん中あたりに「藤村記念館」「本陣」だつた島崎藤村の実家跡)や「脇本陣史料館」がある。(「藤村記念館」の写真は、観光客がずつとゐて撮れなかつた。)どちらも時間が無くて見学できなかつた。(随分前に来た時には見学した。)

 ツアーでは「馬籠宿」で各自自由に昼食だが、宿場内にあるのはほぼ蕎麦屋。その一軒「恵盛庵」では、写真のやうに長い行列が出来てゐた。小生も、昼食は「近江屋」蕎麦と五平餅を食した。五平餅といふと一般には小判型(平べつたい楕円形)を思ひ浮かべるが、地域によつて形が違ひ、「馬籠宿」のものは団子型だつた。(「奈良井宿」では小判型だつた。)

 「恵盛庵」の先、宿場の北端には、やはり「高札場」がある。

 「高札場」を越えてさらに坂を登ると、「展望広場」があり、恵那山など周囲の山々が見渡せる。

 「馬籠宿」を出て、最後の目的地である「恵那峡」に向かふ。
 「恵那峡」は、木曾川中流の渓谷で、「大井ダム」の上流約10kmの区間。水力発電用の「大井ダム」建設に伴つて人造湖が出来たことによつて誕生した景勝地である。奇岩が多いことが特徴で、観光のための遊覧船が就航してゐる。

 小生たちも、遊覧船に乗つて「恵那峡」を周遊する。

 「恵那峡」には、赤い「恵那峡大橋」が架かり、湖岸にはさまざまな形状の奇岩がある。地質学的にも貴重である。

 近くには、「恵那峡ワンダーランド」(遊園地)もあり、駐車場からも観覧車が見える。

 特急「あずさ」に乗り換へるため、「茅野駅」に向かふ。バスの車窓からは、「日本アルプス」「諏訪湖」も眺められた。

 「恵那峡」を早めに出発したため中央道で渋滞に遭はず、「茅野駅」で少し時間が出来た。

 「茅野駅」に直結する形で、瀟洒な造りの「茅野市民館」がある。「茅野市民館」は、劇場・音楽ホール・美術館・スタジオ・図書室・レストランなど、さまざまな機能を合はせ持つ文化複合施設で、利用者によつて多様な使ひ方に対応できるさうだ。設計は建築家・古谷誠章で、2007年に「日本建築学会賞」「日本建築家協会賞」を受賞。2011年に「日本芸術院賞」受賞。毎年9月中旬に開催されてゐる「小津安二郎記念蓼科高原映画祭」の会場の一つにもなつてゐる。

 特急「あずさ」に乗つて、帰京する。
 夕食は、車中で「諏訪湖サービスエリア」内の「神戸屋ブレッズ」で買つた「信州豚のメンチカツバーガー」「諏訪湖あんぱん」を食す。

 天候にもおほむね恵まれ、「奈良井宿」以外は混雑も黄金週間にしてはさほどではなく、好い旅だつた。

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