荒木文宏・奥原哲志『てっぱく発 鉄道物語』

積ん読解消 読書日記

2025.04.09

 荒木文宏・奥原哲志『てっぱく発 鉄道物語』(岩波ジュニア新書)読了。
 著者は、さいたま市にある「鉄道博物館」の副館長と主幹学芸員。
 小生、若い頃は自分の車やレンタカーで関東甲信越のみならず東北・北海道や中国地方を旅したりもしたが、最近はもつぱら電車での旅である。都会の喧噪を離れ、のんびり車窓の風景を眺めてゐると、心が癒される。観光列車で、美しい風景を眺めながら、地元の食材を用ゐた料理に舌鼓を打つのは、至福の時である。
 ただし、小生、〝鉄道マニア〟ではないので、鉄道の歴史や技術については詳しくない。少しは鉄道について知つておきたいと思つてゐたら、ちやうど本屋の新刊書の棚にこの本が並んでゐた。
 本書は、「朝日新聞埼玉版」に連載中のコラム「てっぱく発 鉄路さいさい(埼彩)」の2024年7月までの記事を一部加筆・修正して、内容別に編集し直したもの。記事は、1回が新書版で1ページ半程度で、写真を載せて、毎回ちやうど見開き2ページ分なので、読みやすい。
 内容は多岐に渡り、「川越線」がかつては東京を経由せずに東北本線と東海道本線を結ぶ軍事路線だつたとか、「山手線」が東海道線と東北線・高崎線を繋ぐバイパス路線として開業したとか、「女性専用車」が実は明治時代からあつたとか、小生には初耳の話も多かつた。また、「鉄道博物館」「SL(蒸気機関車)シミュレーション」を導入するに当たり、ソフト開発を担ふシステムエンジニアたちは実際のSLを見たことも無い20〜30代だつたので、営業線で走つてゐるSLの運転台に乗せ、運転や機器の操作方法を見て映像に記録してもらつたり、シミュレーターの映像はJR釜石線の実写映像を使ふことにし、ダイヤの隙間を定速で走らせたりたり、さまざまな苦労の末、元国鉄機関士が「実物通りの感触だ」と評価し、英国の「国立鉄道博物館(NRM)」の館長も気に入つてNRMにも入れたいと言ふほどのものが完成した話など、鉄道への愛情がひしと伝はつてくる話も多かつた。
 今度、ぜひ「鉄道博物館」にも行つてみたいと思つた。

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