M5(システム手帳)用ミニペン

偏愛文房具

 手帳に何かを書くには、筆記具(ペン)が必要である。バイブルサイズやM6サイズならいくらでも選択肢があるが、M5の場合は悩ましい。まづサイズの制約があり、手帳との相性もあり、デザインに対する好みもある。これといふのを見付けるのはなかなか難しい。
 参考に、小生が所有してゐるミニペンを紹介してみたい。世界的に最も使はれてゐる筆記具はボールペンなのだらうと思ふ。海外の筆記具ブランドは、ボールペン(ローラーボールを含む)しか、あるいはボールペンと万年筆しか無いシリーズがかなりある。ただ、小生はボールペンの筆跡や書き味があまり好きではない。そこで、紹介するのはペンシル(メカニカルペンシルいはゆるシャープペンシル)と万年筆が中心である。ただ、多くの場合、同じシリーズのボールペンが作られてゐると思ふので、ボールペンを愛用する人はそちらを試してほしい。また、残念ながらミニサイズの筆記具のシリーズは、製造中止になつてゐるものが少なくないが、それでも運が好ければ手に入れられる場合もあるので、一応紹介しておきたい。

ペンシル(メカニカルペンシル・シャープペンシル)

 まづは、「グラフ・フォン・ファーバー・カステル(GRAF VON FABER-CASTELL)」「クラシック・コレクション・ポケット・ペン」(左)と「ポケット・ツイスト・ペン」(右)である。芯の太さは、どちらも0.7mm。欧米では、芯径0.7mmが一般的で、0.5mmはなかなか無い。(漢字とアルファベットの違ひが現れてゐるのだらう。)ファーバー・カステルも、製図用以外は基本的に0.7mm。0.7mmだと、行幅が狭いとちと書きにくい。どちらもボールペンもある。ただし、「ポケット・ツイスト・ペン」は、生産中止になつてゐる。「クラシック・コレクション・ポケット・ペン」も入手はやや困難。(最近、銀座「伊東屋」で置いてゐるのを見たが、大手通販サイトでも品切になつてゐるところが多い。)

 「クラシック・コレクション・ポケット・ペン」は、上品な佇まひで、精緻な作りが、持つ喜びを感じさせる。キャップはねぢ式で、筆記の際にはボディの後ろに付けて全長を長くできるので書きやすいのだが、ボディは2重になつてゐて内側にねぢが切つてあるため、前後どちらに付ける場合も外からねぢは見えない。ドイツのクラフトマン・シップが感じられる。クリップもバネ式になつてゐて、布や革を傷めにくくなつてゐる。

 小生は、やはり丁寧な作りで高級感のある「GANZO」の「シン・ブライダル」に合はせてゐる。(手帳自体にペンホルダーは付いてゐないので、「PLOTTER」のペンホルダー・リフィルを使用。)

 次は、「モンブラン(MONTBLANC)」「マイシュターシュティック・モーツアルト」。芯の太さは、やはり0.7mm。万年筆とボールペンもあるが、ボールペン以外は入手困難。日本の高級万年筆は、ほとんどがこのモンブランの「マイシュターシュティック」を手本にしてゐる。かつては日本の作家でも「マイシュターシュティック」の「146」や「149」を愛用する人が多く、文房具愛好家には憧れの万年筆だつた。小生も、大学時代にアルバイトで溜めた金で「146」を買ひ、それで卒業論文を書いた。(今はパソコンで書くのだらうが…。)

 小生は、やはりクラシカルなデザインの「ファイロファックス」の「オリジナル」と合はせてゐる。「オリジナル」は、リング径がM5としてはかなり大きい19mm。リフィルをたくさん収納できるので、行幅の広いリフィルも使ひやすい。

 「ペリカン(PELIKAN)」「M300」。芯の太さは、やはり0.7mm。ペリカンは、クリップがペリカンの顔になつてゐるのが可愛らしい。万年筆とボールペンもあるが、どれも入手困難。

 小生は、リング径がやや大きめの13mmの「アシュフォード」の「ネオフィナード」に合はせてゐる。そもそもM5のペンホルダーは、径が小さく、小型の「モーツアルト」や「M300」でも入らないものが多い。「オリジナル」のペンホルダーはゴムで、「ネオフィナード」のペンホルダーは可動式なので、太めのペンでも合はせることができる。

 「カラン・ダッシュ(CARAN d’ACHE)」「エクリドールXS」。カランダッシュは、最近は「849」でも芯径0.5mmのペンシルを作るやうになつたが、以前はほぼ0.7mmだけだつた。でも、「エクリドールXS」は以前から芯径0.5mm。デザインはクラシカル・モダンの6角鉛筆型で、種々の手帳に合はせられると思ふ。万年筆・ボールペンもあるが、生産中止のため入手は困難。

 「カヴェコ(Kaweco)」「スペシャル・ペンシル・ミニ」(左・中)。これは、芯径が0.5mm・0.7mm・0.9mm・2.0mmと揃つてゐるので、各自の用途に合はせて選べる。デザインは6角鉛筆型で、やや重めのボディが小生には好み。ただし、別売のクリップを付けた方がよい。クリップが無いと、ペンホルダーから抜け落ちてしまふことがある。これは、現在でも現役で生産されてゐて、入手しやすい。「リリプット」(右)は、万年筆とボールペンのみでペンシルは無し。(写真は万年筆。)こちらも、別売クリップあり。

  「ラミー(LAMY)」「アジェンダ(日本では「アルミナ」とも)(左)と「ピコ」(右)。アジェンダ」は、生産終了だが、小生は去年家電量販店のブランド筆記具コーナーで売つてゐるのを見付けた。ボールペンもあり。「ピコ」は、ボールペンのみ。

 「アジェンダ」は、クリップの位置が上下にスライドするのが特徴。かういふギミックも面白い。手帳(ペンホルダー・リフィル)によつてペンホルダーの位置が違ふのに対し、クリップをスライドさせてある程度は対応できるものの、ペンホルダーの位置がかなり高い手帳が多いので、実際には1番上にスライドしてもノック部が上にはみ出てしまふことが多い。

 「ピコ」は、尻の部分を押すとポンとボールペンの先が出る。同時にボディも長くなつて書きやすくなる。こちらは、現役モデルなので、入手しやすい。鞄に1本入れておくと、便利である。

 今まで紹介したのは、すべてヨーロッパのブランドのものである。日本の文房具メーカーの技術力は高く(フリクションやクルトガなどなど)、海外でも評価されてゐる。万年筆のペン先の種類も多く、漢字を美しく書くには日本のメーカーのものの方が幅広く対応できる。ただ、機能美とオリジナリティを備へたデザインでは、まだ欧米のものに及ばない気がする。また、M5に合はせるミニペンとしては、日本製のもので適するものが少ない。下の写真の左・中のもののやうに、かつては手帳の背の部分に挿した細身のペンが多く、長時間の筆記にはちと辛い。ペンホルダー・リフィルも、かつてはこのタイプの細いペンしか挿せないものが多かつた。(ただし、左のものはノック部分のキャップを外すとボールペンになつてをり、このサイズで多機能になつてゐる優れものだし、中のものはこの細さにしては持ちやすく、デザインも悪くないと思ふのだが…。右のものは「ラミー」の「ピコ」と似たギミックで、キャップ部を引くとボディが伸びると同時にボールペンの先が出る仕掛けになつてゐる。)

 日本製でも、最近は筆記しやすい太さ・デザインのものも現れてゐる。下の写真は、「ハイタイド」「penco」シリーズである。左は「ドラフティング・ペンシル」で、6角鉛筆型で、芯径は0.5mm。ボールペンもある。持つ部分は滑り止めが付いてゐて書きやすく、気に入つてゐる。ただ、滑り止めは鑢状なので手帳の内側の革に傷が付かないか、ちと気になる。右の「パレット・シャープペン」は、キャップ式で、筆記に十分な太さがあるが、正直高級感は無い。芯径はやはり0.5mm。(日本製は、芯径0.5mmが圧倒的に多い。)

万年筆

 ペンシルで紹介した「モンブラン」「マイシュターシュティック・モーツアルト」にも「ペリカン」「M300」にも万年筆があり、デザイン・書き心地ともにすばらしい。(先に述べたやうに現在は入手困難だが…。)それ以外に小生の持つてゐるM5に合ふ万年筆を紹介する。

 まづは、「Craft A」「OutFit-S(万年筆)」で、ずんぐりしたルックスが可愛らしく、ボディの木が温かみを感じさせる。ボディの木には何種類かがある。ただし、小さな工房なので、生産数が限られ、いつでも購入できるわけではない。

 小生は、「アシュフォード」の「ディープ」に合はせてゐる。ペン軸がかなり太いので、ペンホルダーが限られるが、この「ディープ」のペンホルダーは可動式なので対応できる。ダークブラウンの革色も木軸の色と合つてゐる。

 次は、「helico」「シュクル」(下)と「大西製作所」「コルト」(上)。どちらもねぢ式のキャップをボディの後ろに付けると、筆記しやすい長さになる。アクリルの模様も美しい。ただ、クリップが無くペンホルダーから抜け落ちやすいので、別に小さなケースに入れた方がよいと思はれる。(別に持つのなら、この大きさに拘泥する必要はないか…。)

 次は、「ハイタイド」「アタシェ(attache)マーブル万年筆」。やはり、ねぢ式のキャップをボディの後ろに付けると、筆記しやすい長さになる。クリップもあるので、ペンホルダーに挿すのもよい。値段も手頃なので、M5用に万年筆を試してみたい人にはよいだらう。

コメント

  1. TAICHI より:

    M5用のペンは、なかなかサイズ的に合うものが少なく、僕も困ってました。モンブランのモーツアルトやペリカンの300は知っていましたが、値段的にちょっと手が出ませんでした。ファーバーカステルのポケットペンやカランダッシュのエクリドールXSは知りませんでした。でも入手困難なのですね。カヴェコのスペシャルペンシル・ミニが、芯の太さもいろいろあり、ボールペンもあるし、良さそうですね。ありがとうございます。

    • Kaz Kaz より:

      コメントありがたうございます。
      さうですね。M5に合ふミニペンは、サイズ的に限られる上に、次々と生産中止や減産になつて入手困難なものが増えてゐます。残念ですが、やはり手の大きな欧米人には小さなペンの需要は少ないのでせうね。小生も、カヴェコの「スペシャルペンシル・ミニ」は気に入つてゐて、芯径0.5・0.7・0.9・2.0と揃へてゐます。適度な重さがあるのも、小生の好みに合つてゐます。