感動文房具5 PILOT「万年筆ペン先」

偏愛文房具

 欧米の万年筆のペン先の種類は、EF(極細)・F(細字)・M(中字)・B(太字)の4種類が基本である。EFを除いた3種類のメーカー・モデルもある。比較的ペン先の種類の多いMONT BLANCは、EF(極細)・F(細字)・M(中字)・B(太字)・BB(極太)・OM(中字・先端斜め)・OB(太字・先端斜め)・OBB(極太・先端斜め)の8種類があるけれど…。(さらにカリグラフィー用がある。)先端斜めのペン先(O‥)は、横画が細く縦画が太く書ける。
 それに対して、日本の万年筆メーカーは、ペン先の種類が豊富である。中でもPILOT(パイロット)の場合は、最もペン先の種類の多い「CUSTAM 742」では、以下の16種類のペン先から選ぶことができる。(ちなみにエントリーモデルの「CUSTAM 74」は11種類。)この種類の豊富さには感動する。
  EF(エキストラ・ファイン 極細字)
  F(ファイン 細字)
  SF(ソフト・ファイン 細字・軟)
  FM(ファイン・ミディアム 中細字)
  M(ミディアム 中字)
  SM(ソフト・ミディア 中字・軟)
  B(ブロード 太字)
  BB(ブロード・ブロード 極太字)
  S(シグネチャー 極太字/中字…縦線は極太字、横線は中字)
   ※モンブランの〝O〟に相当
  PO(ポスティング 極細字…ペン先を下向きにした極細字)
  FA(ファルカン 中字・軟…超ソフト調、毛筆の筆跡)
  WA(ウェバリー 中字…ペン先を上向きにした中字)
  SU(スタブ 太字/中細字…縦線は太字、横線は中細字)
  C(コース 特太字)
  MS(ミュージック 極太字…デザインにも使える楽譜用太字)
   ※筆跡は、店頭カタログやHPで見られたし。
 PLATINUM万年筆でも、UEF(超極細字)・EF(極細字)・F(細字)・SF(細軟字)・M(中字)・B(太字)・BB(極太字)の7種類がある。
 SAILOR万年筆では、スタンダードはEF(極細)・F(細字)・MF(中細)・M(中字)・B(太字)・Z(ズーム・筆記角度で太さが変化する)・MS(ミュージック・楽譜用)の7種類だが、独自の長刀研ぎモデル(MF・M・Bあり)もある。
 勿論、日本の万年筆メーカーのペン先の種類が多いのは、漢字・ひらがな・カタカナ(場合によつてはアルファベットその他の文字も)といつた多くの種類の文字を使用する日本語を美しく書くためである。画数の多い漢字を書くためには細いペン先が必要だし、いはゆる〝とめ・はね・はらひ〟を美しく書くためには柔らかく撓るペン先が好い。
 日本の万年筆メーカーの方が、さまざまな状況に合はせて適切なペン先を選びやすい。(用途によつて書く字の大きさも違へば、筆圧などの書き癖は人それぞれだらう。)ちなみに字の太さの基準はメーカーによつて違ひ、一般に同じ〝F〟(細字)でも欧米のメーカーは、日本のメーカーよりも太めである。また、一概には言へないが、同じメーカーで同じ〝F〟でも、ペン先が大きいとやや太めになることが多い。
 下の写真は、小生のパイロット「CUSTOM 67」で、ペン先は〝F〟である。「CUSTOM 67」は、パイロット創立67周年の1985年に発売された14金ペン先のエントリーモデル。現行モデルでは、「CUSTOM 74」に相当する。

 こちらは、パイロット「Elabo」(初代)で、ペン先は〝SF〟である。「Elabo」は、〝日本の文字を表現するのにふさわしいペン先〟を創るために、パイロットと全国万年筆専門店会が共同開発して1978年に発売されたモデルである。最大の特徴は、ペン先の形状で、中ほどで隆起し、先端は長く絞られてゐる。これが筆のやうな撓りを生むのだといふ。現行の「Elabo」は3代目で、ソフト調の傾向が強くなつてゐるさうだ。ペン先の形状は違ふが、筆跡自体は、上記16種のペン先の中では〝FA〟に近い。小生は、手紙を書く時には、この「Elabo」かMONT BLANCの「マイスターシュテュック144」を使つた。(MONT BLANCは、欧米の万年筆の中では、比較的ペン先が柔らかい。)

 最後は、現行のパイロット「CUSTOM 74」で、ペン先は〝SM〟である。ペン先は柔らかく、スラスラと滑らかに書ける。

 3本の筆跡の違ひが感じられないとしたら、小生の字が拙く、ペン先の違ひを上手く使ひこなせてゐないせゐだらう。申し訳ない。

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